農業は僕のライフワーク。
「種まきから食べるまでが農業」と考えて
楽しみながら続けている。
大橋園芸 代表
大橋鋭誌 様
大橋園芸は苗の育成を中心に、お米や野菜などの栽培、お米は乾燥から精米まで行っています。さらに、飲食店のオーナーや、豊田市近郊の若手農業プロ集団「夢農人(ゆめのーと)とよた」の立ち上げメンバーなど、様々な顔を持つ方です。うるち米で作ったオリジナル本みりんの活用や、幅広い活動についての想いをお話しいただきました。
「さすがの本みりん」と
料理長も太鼓判。
うるち米で作るオリジナル本みりんを僕が知ったのは、丼ものの飲食店「丼や 七五郎」の出店計画中のこと。
そもそも僕は食べることが好きなので飲食にも興味があり、農家でありながらもこれまでにフランス料理店の経営やマルシェなどでの露店の経験がありました。ただ、和食は今回が初めて。使用する調味料にも悩んでいたため、九重味淋さんとの出逢いは本当にいいタイミングで、知り合ってすぐに「オリジナル本みりんを作ってお店で使おう」と決めました。
実際にお店で使ってみると、オリジナル本みりんはただ美味しいだけでなく、お店での調理のしやすさを考えても最良の選択でした。
「丼や 七五郎」は、ショッピングセンター「メグリア エムパーク」内のフードコートにあるお店です。料理長はいますが、他のスタッフが料理をご提供することもあるため、再現しやすいレシピであることも大切。和食料理店での経験が豊富なうちの料理長も、「九重味淋さんの代表商品・本みりん九重櫻の良さがオリジナル本みりんにも受け継がれており、味付けが整いやすくて美味しく、お店にぴったり」と太鼓判を押しています。店先では特にうちのお米で作ったオリジナル本みりんだとは謳っていませんが、食べてくれたお客様が「何かが違う!美味しい!」と思ってくれたら本望です。
オリジナル本みりんによって
今後の楽しみが増えた。
うちで育てたお米で他にも加工品を作った経験はありますが、本みりんは未知の世界。本社工場の見学もさせていただき、非常に勉強になりました。本みりんは煮物、照り焼き、めんつゆ、焼鳥のタレなど様々な和食に使われており、改めて“日本人好みの味”ということにも気づかされました。料理に気軽に使えて子供からお年寄りまで味わえるので、オリジナル本みりんは一般家庭でもきっと喜ばれるでしょう。
今後は本みりんを使ったスイーツ作りや、お米を卸している飲食店へ「地産地消です!」と言って紹介するのもインパクトがあって面白いかもしれません。
先の展開を見据えて、本みりんの販売に必要な酒類販売免許もいずれは取得するつもりです。オリジナル本みりんを作ったことで、これからチャレンジしてみたいことが更に広がって、とてもワクワクしています。
稲や野菜の育ちに大きく影響する
「苗作り」が好き。
豊田はもともと稲作地帯でお米農家が多く、国の減反政策により指定された割合でお米と大豆と小麦を育てる農家さんがたくさんいます。その点はうちも同じですが、本業は苗作り。今から50年ほど前に父がトマト栽培に挑戦し、当時はトマトの需要が少なくて数年でやめてしまったのですが、残されたビニールハウスでかわりに野菜の苗を育てたのが始まりです。僕が種苗会社で苗作りについて学んで家を継いでから、もう20年以上になります。
農業や園芸には「苗半作」という言葉があり、稲や野菜などの育ちには「苗の良さ」が大きく影響すると考えられています。それだけ苗作りは責任も大きく、やりがいがあって面白いもの。僕は苗作りが好きなので、父の代より自然と苗の種類が増えていき、現在は野菜や稲、お花の苗を年間で150品種以上、70万本以上を出荷しています。
豊田の農業を盛り上げるべく
「夢農人とよた」を立ち上げ。
僕自身は楽しんで農業を続けており、お米農家は今もまわりにたくさんいますが、近年、豊田は都市化が進んで兼業農家も増えています。そのため、「このままでは豊田の農業は衰退してしまう…」と危機感を持っていました。
長年、農業に携わっていると街づくりに関わることが多く、地元について考える機会もよくあるからです。そこで、同じ想いを持つ石川製茶とトヨタファームとともに立ち上げたのが、若手のプロ農家集団「夢農人とよた」です。
農家同士の繋がりを持つことで、自分ひとりでは解決が難しいことも相談出来るようになり、ときには経験者が若手にチャンスを回すこともあるので、新規就農者にとって良い環境が整ってきたと感じています。
「夢農人とよた」では農家同士で勉強会を開くほかにも、カフェやマルシェなど様々な活動を展開しています。僕も活動の一環で様々なことに取り組んでおり、以前考案した豊田産の小麦や豚肉を使った「このまちうどん」は好評で、今もマルシェや「丼や 七五郎」で作っています。地元のものを地元で美味しくいただきながら、豊田の農業をもっと盛り上げて一緒に楽しむ人を増やしたいと考えています。
地元への想いからトマト栽培にも着手。
楽しいことに全力で取り組む。
桃太郎トマトの栽培を始めたのも、「夢農人とよた」がきっかけです。
豊田市にはそもそも野菜農家が少なくて、地域の野菜がほとんどありません。マルシェの商品もお米ばかりで、「地元の新鮮な野菜」が欲しいなと感じました。そこで「豊田の野菜をうちが育てよう!」と思い、トマトは僕が好きで少量を露地栽培していたので、トマトの栽培に取り組むことにしました。
やるなら本気でと考えて、ゼロからビニールハウスを設計。温度や水やりなどをコンピュータで管理する最新式の環境制御栽培を、従来より低コストで実現させました。この試みは先進的で、海外から視察に来られる方も多くいらっしゃいます。そうして育てているのが、赤色の大玉トマト「桃太郎ホープ」と黄色の大玉トマト「桃太郎ゴールド」の2種類です。希少な桃太郎ゴールドは東京の洋食店の総料理長からもお声がけいただき、それぞれトマト自体やトマトジュースもおかげ様でいろいろと反響をいただいています。豊田の野菜がもっと広まり、新規就農者が増えてくれたら嬉しいことです。
面白いと感じたことに取り組むうちに、いつの間にか活動の幅が広がってきましたが、それは僕が「種まきから食べるまでが農業」だと思っているからです。食べるところを想像すると、美味しいものを作れるよう頑張ろうと苗作りや栽培にも力が入るし、食材や料理、飲食店にも興味が広がります。だから、僕にとって農業とは仕事として“やらなきゃいけないもの”ではなく、楽しくて続けている“ライフワーク”だと思っています。地元・豊田のことを考えながら、これからも様々なことに取り組んでいくつもりです。
『大橋園芸』様
野菜や稲、お花の苗を150種類以上育てる本業のほかにも、お米・大豆・小麦・トマトなどの栽培、飲食店経営と幅広く展開。また、地域とのコラボレーションや若手プロ農家集団「夢農人とよた」の展開など様々な活動を通して地域振興にも取り組まれています。
〒470-1207 愛知県豊田市鴛鴨町畑林280